<肌にとって重要な意味を持つ“弱酸性”>
そもそも弱酸性とは
どういう状態のことか?
酸性の度合いを示す指標が
pH(ペーハー)となる。
pHは「0」から「14」まであり
中間の「7」が中性となり
それよりも数が小さければ酸性
大きければアルカリ性となります。
弱酸性とは「7」よりも
若干酸性よりということになる。
肌においての弱酸性とは
通常「pH4.5〜5.5」となる。
この範囲内にあることが
最も望ましい状態と言える。
それではなぜ
弱酸性が肌にとって理想の状態なのか。
それは3つある。
1 悪玉菌を排除できる
悪玉菌の代表は黄色ブドウ球菌だ。
黄色ブドウ球菌はアルカリ性環境を好み
そのような状態になると一気に増殖する。
最新のアトピー性皮膚炎に関する研究では
「アトピー患者の皮膚には
黄色ブドウ球菌が異常増殖している」
という報告がなされている。
黄色ブドウ球菌が
なぜ悪いのかと言えば
毒素を産生して「デスモソーム」という
タンパク質を溶かしてしまうからだ。
スキンバリア膜である
角質層には角化細胞と角化細胞を
繋ぎとめているホッチキスのような
ものがあるが、これが
「デスモソーム(糖タンパク)」である。
デスモソームがあるからこそ
角化細胞はビッシリと隙間なく
整列してバリア機能を保持できる。
しかし
黄色ブドウ球菌が放出する毒素は
このデスモソームを溶かしてしまう。
このため角化細胞は
バラバラになってしまい
本来であればまだ留まるべきものが
早く剥がれてしまいその隙間から
水分が蒸散したり、異物が混入して
炎症を起こしてしまう。
また
アトピー性皮膚炎の場合には
痒みを伴う。
その痒みに耐えられずに
かいてしまうとリンパ液が
出る場合がある。
実はこのリンパ液は
弱アルカリ性なので
余計に黄色ブドウ球菌が
増殖させてしまうという
さらなる悪循環が起こることになる。
一方、肌が弱酸性に傾くと
黄色ブドウ球菌は生息できなくなる。
これによって
黄色ブドウ球菌による
肌トラブルは解消される。
私たちが生まれた時の肌は
pH「7」の中性だ。
だから赤ちゃんの時には
たびたび皮膚炎が発症する。
しかし、成長過程でゆっくりと
中性から弱酸性への変化していく。
それに伴い
肌トラブルは減少していくのである。
このように大人の肌は
「弱酸性の皮脂膜」で守られているが
そのpHの値は、年齢、部位、気温
時間帯によっても変化する。
特に年齢による影響は大きく
高齢者ほどアルカリ性へと傾斜していく。
だから、老人の皮膚は
若者と比較して劣化している。
これは単なる老化現象だけではない。
肌を「弱酸性に維持できていない」
ことによるものである。
2 健全なターンオーバーを維持する
ターンオーバーとは
「細胞の生まれ変わり」のことである。
肌は角質層が最も外側に位置している。
この角質層は
角化細胞で構成されているが
最外層にある角化細胞は
時間の経過とともに剥がれ落ちる。
これがいわゆる
「垢」と呼ばれるものだ。
古くなった
角化細胞が剥がれ落ちると
その下層では新しい細胞が生まれる。
それが生まれることで
新しい層が作られるので
従来から存在する層は
上層へと押し上げられる。
こうした精密な循環サイクルが
滞りなく行われることで
肌はつねにキメ細かく
サラサラとした理想の肌を維持できている。
実は、この循環サイクルを
制御している一つの要因が
精妙な「pH勾配」である。
健全な角質層は
外側に向けてpHが弱酸性になる。
そして角質細胞どうしを
つなぎとめているデスモソームは
pHが中性に傾斜すると破壊されていく。
角質細胞が下層から
上層に向かって押上げられると
pHはアルカリ性から弱酸性に傾くので
下層にあるデスモソームは壊れにくく
上層にあるデスモソームは
壊れやすくなるので
角質細胞が剥離しやすくなる。
つまり、このpH 勾配は
角質細胞の分化過程に
大きく影響している。
また、デスモソームは
黄色ブドウ球菌による
毒素によっても破壊されるが
pHにも大きく影響を受けている。
弱酸性よりも
アルカリ性に偏った肌は
デスモソームが破壊されやすくなるので
おのずと角質細胞を
つなぎとめておけなくなる。
すると
スキンバリア層は薄くなり
肌の保湿力もなくなる。
なぜなら角質細胞は
時間の経過とともに成長して
そのなかに天然保湿因子という
水分をたっぷり溜め込むことで
大きくふっくらと育つからだ。
これが「角質細胞の成熟化」であり
その成熟化された角質細胞が
あるからこそ肌は保湿力を維持できる。
しかし、角質細胞が
未成熟なまま剥がれてしまえば
スキンバリア膜はスカスカとなって
刺激に対して弱くなってしまう。
さらに大きな問題がある。
それは美肌菌が生息しなくなることだ。
美肌菌は角質層が厚いほど
多く存在することが明らかになっている。
美肌菌が多く生息すると
皮脂を適度に分解してくれ
天然の保湿クリームを生成したり
その分解産物である「脂肪酸」が
増えることで肌の表面が
弱酸性に傾斜するのである。
3 セラミドの合成能力を高める
肌を弱酸性に維持するためには
「スキンバリア膜の再生」と
「適度な運動による発汗」である。
この2つ以外に方法はない。
スキンバリア膜の重要性は
すでに説明した通りである。
この重要性を理解すれば
ダブル洗顔などによって
スキンバリア膜を
自ら破壊することによる
大きなダメージが発生することを
理解できるはずだ。
スキンバリア膜は角質細胞以外にも
角質細胞の隙間を埋めている
「のり」のようなものがある。
この「のり」は
「細胞間脂質」と呼ばれており
その主成分はセラミドという
脂質でできたものだ。
このセラミドは
体内で合成されるが
その合成過程において
2つの酵素が使われる。
それは
「スフィンゴミエリン」と
「グルコシルセラミド」である。
この2つの酵素は
pHが弱酸性になることで活性化される。
つまり、弱酸性は
細胞間脂質の合成量にも大きく影響を及ぼす。
セラミドの合成量は
50代になると20代の半分と言われている。
それは老化現象だけではなく
肌のpHが維持されていないことを意味する。
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